ゼロから分かる配達プラットフォーム|第2話:待ち時間という在庫—ETA・価格・ネットワーク効果で“待ち”を設計する

待ち時間という在庫をテーマに、都市の夜景上にETA・価格・需要供給を示すタイムラインと矢印が重なった図解風サムネイル(文字入り)

シリーズ|ゼロから分かる配達プラットフォーム

第2話:待ち時間という在庫—価格と時間の再設計

配車/デリバリーの本質は「待ち時間」をどう扱うか。ETA・需要供給・ネットワーク効果を軸に“待ち”を在庫として再設計する。

なぜ「待ち時間」は在庫なのか

配車・デリバリーでは、モノや席の代わりに時間が在庫として振る舞う。車や配達員の“空き時間”、料理の“出来上がり待ち”、受け渡しの“合流待ち”。これらはすべて、見えにくいが確実に積み上がるコストである。小売が在庫回転率で健全性を測るように、オンデマンドは待ち時間の回転で体験を左右する。

在庫には二種類ある。(1)構造的な待ち:地理・道路・厨房キャパなど、設計でしか減らせない待ち。(2)運用由来の待ち:マッチングの遅さ、受け取り動線の詰まり、誤配やゲート問題など、運用改善で減らせる待ち。第2話ではこの在庫を分解し、ETA・価格・ネットワーク効果でどう整えるかを解く。

待ち時間の分解:可視化→短縮(図解)

待ち時間の分解(可視化→短縮) ①検索〜配車/受注 候補生成/価格提示/ETA →意思決定の待ち ②到着までの移動 距離/道路/信号/進入可否 →交通由来の待ち ③受け渡し/調理待ち 厨房/棚/置き配/ゲート →運用由来の待ち 可視化 → 配分(価格/順番) → 短縮(導線/約束)
図1:待ち時間は三つのフェーズに分解できる。まず見える化、次に配分、最後に短縮を狙う。

どのフェーズでも、最初にやるべきは可視化だ。ETAや「準備完了まで◯分」といった表示がそれに当たる。次に、価格や並び順で配分し、混み具合に応じて流れを調整する。最後に、動線設計や標準手順で短縮に踏み込む。

ETAが需要と供給をつなぐ

ETA(到着予測)は、需要(いま頼みたい)と供給(いま動ける)を橋渡しする共通言語だ。理想のETAは「現実的に達成できる短さ」であり、短すぎて外す予測は信頼を削る。逆に、多少長めでも当たる予測は行動計画を立てやすく、キャンセル率を下げる。

  • 連続更新:渋滞・信号・エリア規制を反映し、予測を“生きた数値”として更新する。
  • 説明可能性:遅延発生時は理由を添える(例:厨房混雑/天候/交通事故)。
  • 二点表示:受け取りETAと到着ETAを分けて示すと、誤解が減る。

価格の役割:配分と行動変容

価格は「罰金」ではない。混雑時の配分装置であり、需要を平準化し供給の稼働を引き出すためのインセンティブである。ピークでは価格が上がり、閑散では下がる。この動的調整が適切であれば、全体の待ち時間(在庫)は薄くなる。

  • 需要の平準化:高需要時の上振れ価格は、注文の一部をオフピークへ移す。
  • 供給の増加:稼働インセンティブ(最低保証/ブースト)が供給を呼び込む。
  • 納得の設計:事前見積の内訳と上振れの条件を明確にすることで、不満を抑える。

価格は透明であるほどよい。ただし、細かすぎる説明は逆に理解を阻害する。ユーザーには「今こういう理由で高い/安い」を短く示し、詳細はヘルプへ逃がす設計が現実的だ。

ネットワーク効果:使うほど“待ち”が薄くなる

利用者・配達者・加盟店が増えると、候補が増え、距離が縮まり、ETAの中央値が下がる。これがネットワーク効果の中核だ。加えて、評価とログが蓄積するほど、問題の起きやすい地点・時間帯が浮き彫りになり、アルゴリズムは悪い選択肢を回避できる。ネットワークは量だけでなく、質の選別でも強くなる。

失敗時の路線:遅延・キャンセル・再配達

“待ち”はゼロにならない。だからこそ、失敗時の路線(プレイブック)を先に用意する。

  1. 遅延ETAの上振れを検知→事情説明と新ETA→代替案(別候補/クレジット)を提示。
  2. キャンセル:有責/無責をログで判定→ユーザー摩擦を最小化しつつ、悪用を抑止。
  3. 再配達:置き配/対面の証跡(写真・時刻)→再配の可否判断。

重要なのは、“予防可能だったか”の観点で振り返ること。予防可能なら、プロセスとUIを直す。不可避なら、補償と説明を磨く。

誰が何をすべきか(プラットフォーム/配達者/店舗/注文者)

プラットフォーム

  • 二点ETA(受け取り・到着)の分離表示/遅延理由の短文化。
  • 店舗向けに「受け渡し棚」「優先導線」の標準図面を提供。
  • 置き配写真のガイドライン(角度・距離・背景)を明確化。

配達パートナー

  • 受け取り地点の定番ショートカット(駐輪位置/エレベータ)を個人ナレッジに蓄積。
  • 受け渡しメッセージの定型文(到着○分前/置き配可否/ゲート対応)。
  • 雨天装備・保温/保冷の徹底で品質のばらつきを抑制。

加盟店

  • 注文受付→調理開始のタイミング調整(ピークは先行仕込み)。
  • 受け渡し棚のラベリング(注文番号/時間帯)と引き渡し担当の固定。
  • 汁物は2重フタ・仕切り固定・外袋の結束ルール統一。

注文者

  • 建物名・部屋番号・エントランス写真など、到達に必要な情報を事前登録。
  • 置き配の指定(場所・注意点)を簡潔に。受け渡しを対面に切り替える判断軸も持つ。
  • Uber Oneやオフピークの活用で、費用と待ちのバランスを取る。

日本での最適化ポイント

  • 確実性>速さETAの当たりやすさと再計算の早さが満足度に直結。
  • 清潔の可視化:置き配写真の質、袋の結束、手袋の着脱ルールを明文化。
  • 総額の納得:事前見積の内訳とキャンセル条件を「1スクリーン」で読めるように。

初回体験は“つまずき”が命取りになりやすい。最初の1回を成功させるために、説明・UI・サポートの三点を過剰に厚くしておく価値がある。

まとめと次回予告

待ち時間は在庫であり、見える化→配分→短縮の順で整える。ETAは橋渡しの言語、価格は配分の装置、評価とログはばらつき抑制の弁。ネットワーク効果が回るほど“待ち”は薄くなり、失敗時の路線が体験を支える。次回は「料理が線路に乗る—なぜデリバリーに踏み出したか」を扱う。

編集後記

第1話の「三層(地図/決済/評価)」から、今回は“待ち時間”だけを取り出して棚卸ししました。記事内の図はロゴ非使用の自作SVGです。改善リクエスト(用語の追加や図の追補)があれば、次回の資料編に反映します。

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