🧭 この社会は、何を捨てたのか?|総目次 #第7話 #ケア #組織文化
この社会は、ケアの回路を捨てた。—関係資本としてのケアを設計する

「ケアはコストではなく、関係資本かもしれない。」
「目に見えない手間を見える形にすると、組織は静かに強くなる。」
THESIS: この社会は、無償のケア労働を軽視し、ケアを生産性から切り離してきたかもしれません。しかし、ケアは単なるコストではなく、関係資本として組織や個人の成長を支える基盤と捉えられるはずです。ここでは、30分の“Care Sprint”でケアを可視化し、指標化する試みを置いてみます。
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第1章:見えない労働に価格はつかない

ケアの多くは“段取り・確認・気づかい”といった不可視の手間で成り立ちます。可視化が足りないと、評価や配分から抜け落ち、やった人ほど燃え尽きるという歪みが生まれやすい—そんな見方もあります。
第2章:ケアの倫理を捨てた社会の病理

ケアの倫理(ethics of care)は、関係・文脈・応答に重心を置く視点として紹介されることがあります。抽象的な公平だけでは拾えない細部に、関係の質が宿る、という示唆です。ここでは断定を避けつつ、「ケア=関係資本」という仮説を暫定で置きます。
第3章:心理的安全性というケアの実装

心理的安全性は“ものが言いやすい”環境を指す概念として広く用いられます。以下のチェックは、ケアの回路が通っているかを測る一案です。
- 🗣️ 発言前の自己検閲が薄い(笑われない見込み)
- 🧭 期待役割と判断基準が1文で合意できている
- 🧩 失敗の共有が個人非難なしに回る
【1文合意】AさんがBの意思決定をCの基準でDまでに行うための30分です。
第4章:スプリントで“ケア”を可視化する

Care Sprint は、週1回・30分だけ“誰かの面倒”に全集中する小スプリントです。チーム運用の一例を置きます。
| 段階 | やること | 記録(1行) |
|---|---|---|
| Before(5分) | 相手の“見えない頑張り”を1つ選ぶ/期待値を1文化 | 対象・目的・完了ライン |
| During(20分) | 段取り・確認・連絡・下ごしらえ等のケア作業 | 実行中に発見した“詰まり” |
| After(5分) | 1文で共有/次回は“何をやめるか”を宣言 | やめる1つ/続ける1つ |
# Care Sprint(30min) - Before:対象/目的/完了ライン(1文) - During:やったこと(段取り・確認・下ごしらえ) - After:やめる1つ/続ける1つ(宣言)
第5章:ケアを指標化するデザイン

“ケアのKPI”は、いくつかの補助指標に分解して扱うと誤読を避けやすいかもしれません。例:
- 📌 Care Sprint実施率(週1の実施者割合)
- 📌 Touch Count(ケア接点の回数:小コメント・メモ等)
- 📌 修復速度(誤解→合意までの時間)
- 📌 再訪率(7日/28日の相談再来)
※ 指標は“査定”ではなく“設計の検体”として扱うことを推奨します。
📌 CTA(行動)
- 今週、身近な誰かの見えない頑張りを1つケアする(段取り/確認/下ごしらえ等)。
- 終わったら48時間以内に上のテンプレで1行記録。
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参考・出典
- Ethics of Care(ケアの倫理)概説(原著/学術系への導線を推奨)
- 心理的安全性(Amy C. Edmondson)の紹介記事や原著
- チーム運用の実務知(編集部プロトタイピング):Care Sprintの枠組み