賠償リスクと契約の基本|責任上限・検収・支払いを固める(雛形つき)

契約書とノートPC、ペンの置かれた机上にシールドのホログラムが浮かぶ実写風イメージ(賠償リスクと契約の基本を象徴)

※本記事には広告(アフィリエイトリンク)を含む場合があります。内容は一般情報であり、特定の方への個別の法的助言ではありません。最終判断は必ず各公式情報・専門家に確認のうえ行ってください。

連載:フリーランスの安全網
P1|価値と結論(ハブ)P2|申し込み手順と費用P3|比較と使い分けP4|就業不能の基礎 → P5|賠償リスクと契約の基本(本記事)

 

要点3行まとめ

  1. 賠償リスクは対人/対物/情報/受託物/成果物に分解して考える。
  2. 契約は権利(著作権・利用許諾)×検収×支払いの3点を固める。
  3. 責任上限(賠償の上限)免責を必ず条文化。テンプレを使いまわす。

賠償リスクの棚卸し(5分類)

カテゴリ 対策
対人・対物 現場での転倒/機材落下/破損 等 個人賠償・事業活動保険/安全管理手順/現場ルール遵守
情報(機密/個人情報) データの誤送信・漏洩・持ち出し 秘密保持契約/暗号化・2FA/最小権限/情報漏えい補償
受託物 預かった品や原稿・機器の損壊/紛失 受託物損害の補償/保管ルール/輸送時の梱包・追跡
成果物 納品物の瑕疵・権利侵害(著作権・商標) 検収条件の明確化/第三者素材の権利クリア/ライセンス範囲の限定
契約違反 納期遅延・再委託禁止違反 等 現実的なスケジュール/変更合意手順/再委託の事前承諾

 

契約の基本フレーム(8ブロック)

  1. 仕事の範囲(Scope):成果物・作業・除外事項・変更手順。
  2. 権利・利用許諾著作権の帰属、利用範囲(媒体・地域・期間・改変の可否)。
  3. 検収・修正:納品→検収期限→不備の定義→無料修正回数と範囲。
  4. 対価・支払い:前受/着手金・マイルストーン・支払サイト・遅延損害金。
  5. 秘密保持(NDA)・データ取扱い:機密定義、目的外利用禁止、返却/破棄、漏えい時の通知。
  6. 責任の範囲間接損害の免責賠償責任上限(通常は受領対価相当など)。
  7. 再委託・下請け:可否・条件・守秘義務・責任の帰属。
  8. 準拠法・紛争解決:管轄合意、仲裁/調停の選択。

ミニ雛形(条文テンプレ+メール文例)

条文テンプレ|責任制限(賠償の上限)

(責任の範囲)
1. 甲および乙は、本件契約に関して相手方に生じた逸失利益、特別損害、間接損害、結果的損害について一切の責任を負わないものとする。
2. 甲および乙の賠償責任の上限は、当該損害発生の原因となった本件業務に対し相手方が支払った対価の総額を上限とする。
3. 前各項は、故意または重過失による損害については適用しない。

条文テンプレ|検収・修正回数

検収)
1. 乙は成果物を納品したとき、甲は受領日を含め○営業日以内に受入可否を通知する。期間内に通知がない場合は検収完了とみなす。
(修正)
2. 乙は軽微な不備について、無償で○回まで修正対応する。範囲を超える変更は別途見積りとする。

条文テンプレ|権利と利用許諾

(権利帰属・利用許諾)
1. 成果物の著作権は乙に帰属する。乙は甲に対し、本契約の目的の範囲に限り、非独占的・譲渡不可の利用を許諾する。
2. 甲が独占利用や二次利用を希望する場合は、別途条件(追加対価・期間・媒体)にて合意する。

メール文例|前受30%+マイルストーン払い

件名:支払条件(前受・マイルストーン)のご相談
本文:
初回取引につき、着手時30%、中間納品30%、検収時40%のマイルストーン払いをご提案いたします。
御社の経理運用に沿う形で柔軟に調整します。ご検討よろしくお願いいたします。

メール文例|検収期限の明確化

件名:検収期間と修正回数の確認
本文:
納品後○営業日以内にご確認をお願いできますでしょうか。期間内に不備のご指摘がない場合は検収完了とさせてください。
修正は無償○回まで対応し、それ以上は別見積りといたします。

 

事故を起こさない運用(実務チェック)

  • 素材の権利表記:写真・フォント・音源・AI生成素材のライセンスと出典を記録。
  • 版管理:納品前に版番号・日付を付け、差分はGit/クラウドで残す。
  • 納品ログ:提出日時・方法・相手の受領記録(既読/開封)を保全
  • 秘密保持:共有リンクは有効期限+パス、アクセス権限は最小限。
  • エスカレーション:仕様変更はメール/議事録で合意→見積り再提示→納期再設定。

FAQ(よくある疑問)

Q. 相手の雛形が強すぎる場合は?
A. 責任上限間接損害免責検収期限修正回数前受/マイルストーンの5点に絞って交渉。
Q. フリー素材を使った場合の責任は?
A. ライセンスの範囲外利用は成果物瑕疵になり得ます。出典と許諾範囲を納品書に添付。
Q. 万一の賠償に備える商品は?
A. 個人賠償・事業活動保険・受託物損害・情報漏えい補償など。既契約との重複/不足を確認して最小コストで上積み。
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文責:コウタ|Side Hustle Dad TOKYO