
長津田アピタに呼ばれる日がある。
十日市場あたりで配達しているつもりが、Uberをつけた瞬間、気づけば長津田方面へ流されている。
そして見えてくるのが、アピタ長津田だ。
僕の中では、ここは「フードコート連合軍」の拠点である。
ただ、今回の話はフードコート全体の話ではない。
もっと小さい。
もっと地味。
でも、配達員としては妙に記憶に残る話だ。
長津田アピタのサブウェイで、配達員はなぜヘルメットを脱ぐのか。
長津田アピタのサブウェイでは、ヘルメットを脱いで入る
長津田アピタのサブウェイでは、僕のピック体験上、ヘルメットを脱いで入る必要がある。
この書き方がたぶん一番正確だと思う。
全国のサブウェイがどうとか、全店舗共通でどうとか、そういう話をしたいわけではない。
あくまで僕が長津田アピタでピックに行く時の体験として、ヘルメットをかぶったまま店に入るのではなく、外して入る流れになる。
だから、バイク置き場に原付を停める。
スマホで店名を確認する。
サブウェイだと分かる。
そして、ヘルメットを脱ぐ。
この一連の動きが、僕の中ではもうセットになっている。
ルールもある。でも正直、格好悪いから外す気持ちもある
ただ、ヘルメットを脱ぐ理由は、ルールだけではない。
正直に言えば、僕自身もアピタの中をヘルメット姿で歩くのは少し格好悪いと思っている。
道路の上なら、ヘルメットは仕事道具だ。
安全装備であり、配達員の当たり前の姿である。
でも、商業施設に入った瞬間、その見え方が少し変わる。
家族連れがいる。
買い物客がいる。
普通にサンドイッチを買いに来た人がいる。
その中へ、ヘルメットをかぶったまま、でかい配達バッグを背負って入っていく。
別に悪いことをしているわけではない。
仕事で来ている。
でも、なんか少し浮く。
この「なんか少し浮く」が、配達員にはある。
だから外す。
ルールとしても外すし、自分の感覚としても外す。
この二重の意味で、長津田アピタのサブウェイに行く時、僕はヘルメットを脱ぐ。
ヘルメットを脱ぐと、配達員モードが少し変わる
不思議なもので、ヘルメットを脱いだだけで、配達員としての自分のモードが少し変わる。
外を走っている時は、完全に仕事モードだ。
スマホを見る。
案件を見る。
距離を見る。
単価を見る。
信号を見る。
車を見る。
歩行者を見る。
頭の中はずっと配達のことで埋まっている。
でも、アピタの入口でヘルメットを脱ぐと、少しだけ普通の人に戻る。
いや、普通の人に戻るというより、普通の人っぽく見えるように調整する、という方が近いかもしれない。
配達員であることは変わらない。
バッグも背負っている。
スマホも持っている。
でも、ヘルメットを脱ぐだけで、店内に入る時の圧が少し弱くなる。
「戦場からサンドイッチを取りに来た人」みたいな感じが、少し薄れる。
これ、けっこう大事だ。
商業施設に入る時、配達員は少しだけ自分を調整する
配達員は、街の中をかなり特殊な状態で移動している。
大きなバッグを背負い、スマホを確認し、短時間で店と届け先を移動する。
道路上では、それが自然だ。
でも、商業施設の中では少しだけ異物感が出る。
だから、入口で自分を調整する。
ヘルメットを脱ぐ。
スマホを見すぎないようにする。
人の流れを邪魔しないように歩く。
バッグをぶつけないように気をつける。
店員さんやお客さんの邪魔にならない場所で待つ。
こういうことは、誰かに細かく教わるというより、現場で少しずつ覚えていく。
配達員は、ただ商品を受け取るだけではない。
その場所の空気に合わせて、自分の振る舞いも変えている。
長津田アピタのサブウェイでヘルメットを脱ぐという小さな動作にも、その感覚が出ている気がする。
長津田アピタは、配達員にとって分かりやすい方だと思う
誤解のないように言うと、長津田アピタが面倒な場所だと言いたいわけではない。
むしろ、商業施設ピックの中ではかなり分かりやすい方だと思う。
センター北やセンター南の大型商業施設は、最初の頃はなかなか大変だった。
どこに停めるのか。
どこから入るのか。
店は何階なのか。
自分は今どこにいるのか。
そういう迷宮感がある。
その点、長津田アピタは構造が比較的シンプルだ。
バイク置き場に停める。
ヘルメットを置く。
階段かエレベーターで移動する。
サブウェイは1階。
バーガーキングやケンタッキーも1階。
2階のフードコートには、マクドナルドやはなまるなどがある。
「どこだよ、店は」と迷い続ける感じではない。
配達員にとって、これはかなりありがたい。
だからこそ、サブウェイのヘルメット問題だけが妙に記憶に残る。
構造は分かりやすい。
でも、入口で一回ヘルメットを脱ぐ。
この切り替えが、なんとも配達員らしい。
ヘルメットを脱ぐだけで、街の中に入る感覚になる
ヘルメットを脱ぐ。
たったそれだけのことだ。
でも、配達員にとっては、仕事の場所が切り替わる合図でもある。
道路から店内へ。
移動する人から、受け取りに来た人へ。
外のスピードから、商業施設の歩く速度へ。
原付に乗っている時の自分と、サブウェイの前で商品を待つ自分は、同じ配達員だけど少し違う。
その違いを作るスイッチが、ヘルメットなのだと思う。
ヘルメットを脱ぐと、街の中に入る。
ヘルメットを置くと、少しだけ普通の人の速度になる。
そして商品を受け取ったら、また原付へ戻る。
ヘルメットをかぶる。
配達員モードに戻る。
この切り替えを、長津田アピタのサブウェイは毎回思い出させてくる。
だから僕は、あそこでヘルメットを脱ぐたびに少しだけ思う。
配達員は、ただ街を走っているだけではない。
場所ごとに、自分の見え方を変えながら走っているのだ。
編集後記
長津田アピタのサブウェイでヘルメットを脱ぐ話。
これだけ聞くと、ものすごく小さい話です。
でも、配達員としてはこういう小さい場面が妙に記憶に残ります。
道路では当たり前の格好が、商業施設に入った瞬間に少し浮く。
だからヘルメットを脱ぐ。
ルールとしても脱ぐし、自分の感覚としても脱ぐ。
その一瞬に、配達員という仕事の不思議さが出ている気がします。
次は、長津田アピタの「フードコート連合軍」について書く予定です。
サブウェイ、バーガーキング、ケンタッキー、2階のマクドナルドやはなまる。
構造はシンプルなのに、なぜ配達員はあそこに吸い込まれていくのか。
あれはあれで、長津田アピタらしい話になりそうです。