
結論:タイヤ交換直後の最初の100kmは、グリップが安定しない+ブレーキ面が整っていない二重の“未完成期”。ここで急操作(強い制動・大きなバンク・大スロットル)を避け、温度サイクル(温めて→冷ます)を繰り返し、直線主体で路面と面当たりを作ると、接地感が滑らかに立ち上がる。配達では直線多めの導線・人流少・タイル帯回避をセットで。雨夜開始はNG、晴れ日中の乾いた路面から始めるのが最短で安全。
- 表面層:製造工程で生じる微細な離型由来の“つるり”感+新品のエッジ感。走行で摩擦が入ると、微細な凹凸が路面と噛み始める。
- ゴム内部層:温度で硬さと反発が変わる。いきなり高温・高負荷をかけず、穏やかな温度サイクルで性能域を“ならす”。
- 接続系:フロント/リアの荷重配分・サス・空気圧・ブレーキの当たり具合が、接地感の“言語化”に直結。新品時は全部が同時に未整備=慎重に。
※「新品はグリップ最強」ではなく、“育てる前は不安定”が正解。焦らず、段階的に。
段階別メニュー
- A段階(0〜20km):住宅地の直線多め。交差点少、右左折は小さくゆっくり。停止は“じわり”。
- B段階(20〜50km):緩いカーブを寝かさず通過。加減速はミリ単位。白線やマンホールの上で“何もしない”。
- C段階(50〜100km):登坂/緩い下りを混ぜ、温度サイクルを意識。交通量はやや増やして現実運用に近づける。
※ 雨・夜・タイル帯(駅前広場)・橋上の横風区間は初期100kmでは避ける。
配達導線に落とす
- 待機面:赤/オレンジの外周側で、出入り容易な直線路面を“ホーム”に。
- 店選び:ピックアップ〜ドロップが直線で繋がる導線を優先。カーブや坂の多い面は後回し。
- 置き配:段差・傾斜・タイルが重なる玄関は押して移動(跨ったまま無理に操作しない)。
| 要素 | やるべきこと | 理由 |
|---|---|---|
| スロットル | 開け始めをミリ単位で。ゼロ発進後すぐに大きく開けない。 | 駆動で表面を荒らしにくい。荷重変化を穏やかに。 |
| ブレーキ | 直線で弱→中へ段階的。初期はややリア寄り(目安:前6/後4)。 | 前荷重の急変を避け、パッド/ローターの面当たりを整える。 |
| コーナー | 寝かさない/中で“何もしない”。進入で速度を落として一定で回る。 | 端部は未慣らし。入力は直線で完結させる。 |
| 白線・鉄板 | 上での制動・加速・ハンドル入力は禁物。角度は浅く。 | 低μ路で入力すると簡単に滑る。 |
| 停止 | 最後は“じわっ”と握り増し。フロントをガツンと入れない。 | 面当たりを壊さずタッチを育てる。 |
- ウォームアップ:直線中心に5〜10分。頻繁な急加減速は避ける。
- 平常運転:法定内で一定リズム。バンクは浅く、コーナー中は入力しない。
- クールダウン:最後の5分は入力を弱め、自然風で冷却。停車直前に軽い当て効きを数回。
※ 長距離1本より、短中距離×複数回の方が接地感の立ち上がりが素直。配達の“合間稼ぎ”と相性が良い。
手順(フロント/リア共通)
- 軽い当て効き→離すを数十回。停止直前に“スッ”と圧をかけて、引きずらない。
- 弱〜中制動を段階的に。温度を静かに入れて、面の高低差を慣らす。
- 鳴き・引きずり・偏摩耗の有無を確認。続くなら整備店で点検。
やってはいけない
- 急制動の連打(面が荒れて効きムラが固定化)。
- 下り坂での強め当て(過熱→フェードの種)。
- 停車中に強く握りっぱなし(高温でパッドが“焼き付き面”を作る)。
- 指定空気圧を基準。低圧にし過ぎない(“食わせたい”狙いの過度な低圧は逆効果)。
- 気温差での変動をメモ化。季節またぎは要注意。
- グローブ(指先導電/滑り止め)・プロテクター(肘/膝/胸部)。
- ヘルメットの曇り止め/撥水。視界が命。
- ホイール固定部の目視・触診。バルブキャップ装着。
- 走行後に異音/振動/偏摩耗の兆候がないかチェック。
※ トラブル兆候は“いつ/どこで/どう鳴る”までメモると診断が速い。
面・店
- 初期は直線で繋がる店の比率を上げる。細路地のS字や急坂ルートは後半に回す。
- EV混雑の大型モールは導線が長い。C段階以降に投入。
- “面替え”は無音8〜10分で。皮むき中は長居しない=局所リスクを避ける。
置き配
- 段差×タイル×傾斜の複合は押して移動。跨ったまま曲げない。
- 写真は玄関前のみ。共用部は撮らない(安全/プライバシーの両立)。
- 直線当て離し:停止直前に前後を軽く“当てる→離す”。面当たりを育てる。
- ミリスロ練習:一定スロットルで微振れを抑える。右手の“雑さ”を削る。
- 視線の先送り:コーナーは顔だけ先に。ハンドルはニュートラル、車体は立て気味。
※ 練習は人流の少ない直線路/駐輪出入口手前で。公道ルール最優先。
| KPI | 見方 | 目安(初期→100km) |
|---|---|---|
| 停止距離の収束 | 同速・同姿勢での停止距離のバラつき | 20kmごとにバラつき減→100kmで安定 |
| 初期タッチ | レバー握り始めの反応ムラ | 50km付近で均一化の実感 |
| ヒヤリ件数 | 白線/鉄板でのスリップ兆候 | 0〜1回/日まで低減 |
| 言語化メモ | “粘る/逃げる/転がる/噛む”などの表現 | 表現が安定=感覚が整う |
ログ例:Day1 0-18km 住宅直線 / Day2 18-46km 緩カーブ / Day3 46-92km 登下降 / Day4 92-120km 通常導線
Q. 何kmで終わる?
使い方・気温・車両で差はあるが、50〜100kmで“掴めてくる”のが一般的。焦らず段階を踏む。
Q. クリーナーで拭けばOK?
表面を擦っても、内部の“熱が入っていない”状態は変わらない。温度サイクル×面当たりが本筋。
Q. すぐ峠や高速は?
初期は非推奨。直線主体で接地感を作り、タッチが揃ってから段階を上げる。
Q. 雨の日でも始めていい?
推奨しない。視界×路面の悪条件が重なる。まず晴れ日中で慣らし、雨はその後の通常運用で。
Q. 空気圧を落とすと安全?
過度な低圧は挙動が鈍化し、リム打ち・発熱・偏摩耗のリスク。指定値基準で。
- ゼロ発進直後の大スロットル(荷重移動が急で表面を荒らす)。
- バンク中のブレーキ入力(端部未慣らし×荷重移動で転びやすい)。
- 白線・鉄板・タイル上での加減速/操作(低μ路は“上で何もしない”)。
- 雨夜での慣らし開始(視界×路面が同時に悪い)。
- 急制動連発の当たり出し(面荒れ→鳴き/引きずりの温床)。
- 高温停車で握りっぱなし(焼き付き面が残る)。
- 納車直後テンション↑で白線を横切り→リアが逃げる:白線“上”では入力しない。直前で減速。
- 下り坂で当て効き連発→ローター熱だまり→鳴き:平坦直線でやる。坂は冷ます区間に。
- 夜雨のタイル帯で低速ハンドル切り過ぎ→転倒:押して移動。跨って無理に曲げない。
- 空気圧を下げ過ぎ→ダルい挙動→余計な入力増→不安定化:指定値でOK。低圧は処方箋ではない。
- 空気圧=指定値/バルブキャップ装着。
- ブレーキの握り始めタッチ確認(極端な引きずり無)。
- 視界=曇り止め/撥水。装備=手・膝・胸。
- コーナー中は一切入力しない(速度は進入まで)。
- 当て効きは平坦直線で。坂と交差点はやらない。
- 白線/鉄板“上”では何もしない。角度は浅く。
- 異音/振動/偏摩耗を目視・触診。気になるなら翌稼働前に店相談。
- 走行ログに“温度サイクル回数/ヒヤリ件数/言語化メモ”を追記。
「新品タイヤの慣らし中で、直線中心に静かに走っています。玄関前のみ最小限の撮影で、共用部は撮りません。」
「搬入後はすぐ退出します。白線やタイル上での操作は避け、静音で通ります。」
「皮むき中なので無理せず直線で行きます。交差点は先に速度落としてお先にどうぞ。」
Day1 0–18km 晴/住宅直線 / 当て効き×15 / 白線入力ゼロ / ヒヤリ0 Day2 18–46km 晴/緩カーブ / 視線先送り意識 / タッチのムラ↓ Day3 46–92km 晴/登下降 / 坂での入力抑制 / 停止距離の収束感↑ Day4 92–120km 通常導線復帰 / 直線主体 / 雨面は翌日に持越し
※ “主観の言葉”(粘る/噛む/逃げる)を残すと、次回交換が圧倒的に速い。
- 最初の100kmは「やさしく・直線で・段階的」。温度サイクルで育てる。
- ブレーキ当たり出しは平坦直線で“軽く当てる→離す”。急制動連打はNG。
- 白線・鉄板・タイル・雨夜では慣らさない。配達導線は直線多めに再設計。
※ 本稿は一般的な考え方の整理。実車の整備状態・メーカー指示・法令・現場ルールを常に最優先。
※ 本文末は関連2本のみ(運用ルール)。
制度・安全・トラブル対応・稼ぎ方を体系化。最新版・索引はハブから。
※ 事故ゼロ最優先。迷えば「やめる/遅らせる/押して歩く」。